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主観的評価は、アンケート等の方法で入手した被験者の意見に基づいて評価する方法である。評価項目を直接問うことができる反面、評価の公平と普遍性の維持に問題がある。
これに対して客観的評価は、被験者の行動、操作及びその結果など、物理的な量を解析・評価する方法で、被験者の主観などが入りにくい。
また、生理的評価は、人間の生理的機能の変化を評価量とする方法で、心理的・肉体的負担に対しては有効な評価量であるが、信頼度を確保するためには十分な注意が必要である。
本研究では、自動運航システムによる安全性、効率性、及び、操船負担を、操船者を含むシステムとして評価するため、主観的評価量と客観的評価量を総合して判断する必要があった。このため、以下のように評価項目と評価指標を定めた。
?安全性
避航操船における航行の安全性を評価する指標としては、見合い関係にある他船との距離及び時間に注目した評価量を用いることが多い。一般的には、DCPA(Distance to Closest Point Approach)やTCPA(Time to Closest Point of Approach)が用いられる。今回の実験では最接近距離(DCPA)、避航開始距離を用いることとした。
?効率性
船舶航行における効率性を評価する場合、時間的効率の指標として平均船速と所要時間、経済的効率の指標として平均横偏位距離を用いることができる。今回の実験では、航路設定の影響を受けない平均船速と平均横偏位距離を評価指標とした。
?操船負担
計画航路を維持するための変針、避航における変針、及び主機操作による加減速を操船者の作業負担と考え、変針回数及び主機操作回数を評価指標として操船負担を評価した。
?主観的評価
自動運航システムの支援の有効性をオペレータの立場で評価するためアンケート調査を行った。アンケートは、各実験終了ごとに他船動静把握、船位取得、避航操船及び変針操船の4項目を尋ねるものと、全ての実験が終了した後、自動運航システムのマンマシンインターフェイス、機能、航海情報の表示、トランスポンダ、シミュレーション実験全般に関して尋ねるものの2種類を実施した。
5.6.3 シナリオ作成と条件設定
実験シナリオの作成に際しては、評価の対象である自動運航システムの開発の目的、評価項目、実験の規模、ハードウェア構成上の制約などを考慮して定める必要がある。
今回の実験では、支援レベル、航行時間帯、航行海域、輻輳度、船舶構成、気象・海象、当直体制などをパラメータとしてシナリオを作成した。これらパラメータはすべてが独立したものではなく、従属的なパラメータも含まれる。また、自船はVLCC一船種とし、操縦性能の違いは評価対象外とした。
?支援レベル:在来船にはARPA/RADAR,GPSを支援装置として装備、これに自動運航システム(ECDISを含む)を搭載したものをIBS船、さらに、トランスポンダを搭載したものを対照船とする3つの段階を設定した。また、コンパス、オーバーヘッドパネル、チャートなどは標準装備としている。
?航行時間帯:昼間と夜間の2つの時間帯を設定した。
?航行海域:基本的には、狭水域・沿岸域の2つを設定した。
?輻輳度:実験前半は輻輳度が低い状況とし、後半に高い輻輳度へ変化するように設定した。
?舶舶構成:貨物船、PCC、コンテナ船、客船、フェリー、タンカー、練習船、漁船等

 

 

 

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